目をこするのはなぜNGなのか?
目をこする行為はデリケートなまぶたに刺激を与え、まぶたのたるみを悪化させてしまいます。眠気や目のかゆみなどでついつい目をこすってしまうという方は、知らないうちにまぶたにダメージを与えてしまっているかもしれません。
目をこするとまぶたが垂れ下がり、目が開きにくいという状態になることも。ここではまぶたをこすることの悪影響や目をこすってまぶたがたるんでいくメカニズム、どうしても目をこすってしまう場合の対処法をまとめました。
まぶたをこすることによる悪影響
まぶたを日常的にこすると、肌や目のトラブルを引き起こします。ここでは、まぶたをこすることによって引き起こされるトラブルのうち、代表的なものをまとめたました。まぶたをこするクセがある方は、ぜひチェックしてみてください。
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- たるみ
- まぶたを支える薄い皮膚や筋肉は非常に薄く、目をこすってまぶたに強い刺激を与えてしまうと伸びてしまうことも。悪化するとたるんだまぶたが視界をふさぎ、物が見えにくくなります。遮られた視界を広げるため無理にまぶたを開けようとすると、顔や首、肩などの筋肉にまで負担をかかり、疲労感につながることも。まぶたのたるみは見た目年齢を上げるだけでなく、表情をうまく作れなくなるため意図せず疲れたような印象を与える可能性もあります。
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- シミ
- 目のまわりの皮膚をこすると、その刺激でメラニン色素が生成されやすくなり、シミや黒ずみができやすくなります。これは摩擦黒皮症と呼ばれており、一般的なシミとは原因が異なるのが特徴です。シミや黒ずみができる以外に影響はありませんが、メラニン色素が真皮にまで入り込むと改善しにくくなるため、早めの対処を心がけましょう。
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- シワ
- 目元の皮膚は非常に薄く、目を動かしたり、まばたきをするだけでも負担がかかっています。そこに「目をこする」という刺激が加わると、皮膚の組織や筋肉へのダメージがさらに大きくなり、シワができやすくなるのです。とくに、目をこする行為は額にシワができやすくなるため、注意しましょう。
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- 眼病
- 目をこすると、眼球の表面にあるバリア機能が弱まり、雑菌やウイルスなどが侵入しやすくなります。その結果、結膜炎・網膜剥離・水晶体の屈折異常などの眼病が起こりやすくなるのです。視力低下の原因となることもあるため、油断は禁物です。
まぶたをこすり続けると「眼瞼下垂」になるメカニズム
なぜ目をこすることによって眼瞼下垂のリスクが高まってしまうのでしょうか。
目を頻繁に擦ったりすると眼瞼挙筋腱膜と呼ばれる部分が腱板から離れてしまいます。これが大きな原因です。
こちらでも目をこすることが腱膜性眼瞼下垂症の原因の一つになることが紹介されています。
参考:(PDF)信州医誌:新たなる疾患概念「眼瞼挙筋腱膜すべり症」[PDF]
まず、まぶたの仕組みについてご紹介しましょう。普段、まばたきをする際などには無意識のうちに目を開いたり閉じたりしているわけですが、これはまぶたにある「眼瞼挙筋」と呼ばれる部分の働きが深く関係しています。
眼瞼挙筋は非常に薄い筋肉なのですが、この筋肉がまぶたの縁にある瞼板という組織にくっついており、眼瞼挙筋が収縮することによってまぶたが上がって目が開くのです。
まぶたの縁にある瞼板と眼瞼挙筋が付着している部分のことを「挙筋腱膜」と呼びます。
目をこすることが原因で発生する眼瞼下垂は腱膜性眼瞼下垂と呼ばれるものに該当するのですが、腱膜性眼瞼下垂は挙筋腱膜が延びたり緩んだりするために発生するのです。
軽く目をこすったからといってすぐに症状が現れるわけではありません。ただし、頻繁に目をこする癖がついてしまった場合、少しずつ腱板から挙筋腱膜が離れてしまい、あそび部分ができます。
ただ、誰でも一度は目をこすったことがあるはずなので、少しあそび部分ができたとしても眼瞼下垂にはなりません。ほんの少しのあそびなら「ミュラー筋」と呼ばれる筋肉の働きによってカバーできるからです。ミュラー筋とは、本来緊張したり興奮することによって働く筋肉のこと。
- ミュラー筋の働き
夜、眠くなるとまぶたが開かなくなってきますが、これはミュラー筋が延びた状態になるからです。するとまぶたを開いていることができなくなり、徐々にまぶたが下がってきます。
ミュラー筋がまぶたを開いてくれるのであればそれでいいのでは?と思うかもしれませんが、ミュラー筋がカバーできるあそび部分はそれほど多くありません。
そのため、あそびが大きくなりすぎた場合には目を開けたり閉じたりする働きをカバーすることができず、その結果眼瞼下垂になってしまいます。重要なのはできる限りあそび部分を作らないこと。そのためにできる最低限の対策ともいえるのが、目をこすらないことなのです。
もしもあそび部分が大きくなるとどうなるのか?というと、眼瞼挙筋やミュラー筋の働きではうまくまぶたをあけることができなくなるため、おでこを上に持ち上げて何とか目を開こうとするようになります。
- 気づかないうちに悪化しやすい
眼瞼挙筋の働きが不十分になった場合にミュラー筋を使ったり、ミュラー筋の働きが弱まった時におでこを持ち上げるといった動作は無意識のうちに行うことでもあるので、自分でも知らないうちにこのような状態になっていることも珍しくありません。
ただ、普段使わない額の筋肉などを使おうとするとどうしても肩こりなどのトラブルに繋がるため、「最近何となく疲れるな…」といった症状を感じて眼瞼下垂であることに気づく方もいます。
眼瞼挙筋がうまく働かなくなったとしても、ミュラー筋が役割をカバーしてくれているので気づくのが遅れてしまいがちです。日常的に目をこする癖がついている方は、もしかしたら眼瞼下垂につながってしまうかも…といったことをしっかりと考えておきましょう。
- 目をこすらないようにすれば眼瞼下垂のリスクを抑えられる
もしも眼瞼下垂になった場合は自身で対応することが非常に難しくなってしまいます。そのため、病院やクリニックで治療を受けなければならない事態になる前に目をこする癖を何とか改善することが大切です。目が開きにくい、額や眉をあげてまぶたを開いているなどの自覚症状を感じるようになった時には、すでにミュラー筋ではカバーできないほどの状態になっている可能性が高いため、こうなる前に目をこする癖をやめておきたいですね。
眼瞼下垂になる理由は目をこすることだけではないため、目をこすらなければ確実に眼瞼下垂にならないとはいえないのですが、目をこする癖を改善するだけで眼瞼下垂のリスクが少なくなるともいえます。無意識のうちに目をこすっている方は注意しておきましょう。
ある程度のあそび部分は誰にでも存在するものです。目をこする癖がついてしまうと、このあそびに更に追い討ちをかける形になってしまいます。特に年を重ねるとただでさえまぶたの筋肉の働きが弱まり、眼瞼下垂になりやすくなるので気をつけておかなければなりません。
どうしても目をこすってしまう方は
眼瞼下垂を防ぐためにも、できるだけ減らしたい「目をこする」という行動。ここでは、日常でできる対策方法をご紹介します。
- 炎症による目のかゆみ
- 何らかの原因で目に炎症が起きている場合、冷たいタオルやおしぼりを目の上に乗せておくことで、症状を一時的に和らげることができます。ただし、炎症が続く場合は放置せず、早めに眼科などで診察を受けるようにしましょう。
- 乾燥による目のかゆみ
- 眼精疲労や空気の乾燥などで目が乾くと、かゆみが発生することがあります。こんなときは、冷えたタオルで最初に目元を冷やし、次に蒸しタオルで温めるとよいでしょう。目の周りの血行が促進され、涙液などの分泌も活発になります。
- 花粉症による目のかゆみ
- まず、眼球に付着した花粉を洗い流すことが大切ですが、水道水を使うのは避けた方が◎(塩素などが入っているため)。目を洗うときは、市販されている人工涙液などを使用しましょう。また、コンタクトレンズではなくメガネを利用したり、花粉の多い時間帯の外出を避けるなども有効です。
- 無意識に目をこすってしまう場合
- 無意識に目をこすってしまうケースで多いのは、睡眠時。しかし、眠っている間のことですから、分かっていてもやめるのは難しいですよね。就寝時の目のかゆみは、アレルギーや髪の毛による刺激が原因となっていることが多め。眠る前にアレルギー用の内服薬や点眼薬を使ったり、前髪が目にかからないようヘアバンド・ナイトキャップなどを用いると良いでしょう。
眼瞼下垂(がんけんかすい)になってしまったら
すでにたるんだまぶたが黒目にかかっている、目がうまく開けないといった症状がある場合、眼瞼下垂の可能性があります。加齢によるまぶたのたるみと眼瞼下垂では採るべき処置が異なるため、眼瞼下垂に対応している病院・クリニックで相談してみましょう。
眼瞼下垂は一般的に、切開法で伸びてしまったまぶたの筋肉を縮める手術が用いられます。美容クリニックでは切開法の他にも糸を使って切らずに手術ができるケースもあるため、切るのが怖い、痛いのが苦手という方は糸を使って切らずに手術してくれる美容クリニックを探してみると良いでしょう。
>>切らない眼瞼下垂手術を行っているクリニックをチェック