より精密で細かい手術を求めるなら
「切る眼瞼下垂手術」がお勧め
眼瞼下垂の改善は、手術療法が基本。その治療法には、皮膚を切る方法(切開法)と、皮膚を切らない方法(埋没法)の2種類があります。ネットで調べると「切らない眼瞼下垂手術」という言葉をよく見かけますが、医療機関の多くで行われているのは「切る眼瞼下垂手術」。切る眼瞼下垂手術にはさまざまな方法があり、症状によって治療法が異なることもあります。
切らない方法に比べて負担の大きい切開法ですが、皮膚を切って組織を直接見ながら行うため、精密で細かい手術ができるのがメリット。眼瞼下垂の原因となっている部分を確実に処置できるため、高い効果が期待できるのです。
「切る」「切らない」で
何が変わってくるか?
眼瞼下垂の手術には、切る方法と切らない方法がありますが、それぞれにメリット・デメリットがあります。
まず切開法ですが、昔から行われている手術法のため数多くの症例があり、その効果が実証されているのがメリット。糸を使った方法よりも効果が高いため、重度の眼瞼下垂も治療が可能となっています。垂れ下がった皮膚や余分な脂肪も取り除くことができますし、同時に二重まぶたを形成することも可能です。そして何より、保険適用となっています。
デメリットとしては、切開することによるダウンタイムの長さが挙げられます。また、皮膚を切るため元の状態に戻すことができないため、最初のカウンセリング・技術力のある医師選びが重要となってくるでしょう。
切らない眼瞼下垂手術は、まぶたを持ち上げる眼瞼挙筋を糸を使って短縮し、瞼板に固定していく手術。メスを使わないため、腫れ・内出血・痛みがほとんどなく、傷も残りません。当日もしくは翌日から普通の生活が可能なので、仕事をしている人でも安心して受けることができます。また、仕上がりに不満がある場合でも、糸を取れば元の状態にリセットできます。
ただし、大きな治療効果が期待できないため、症状の重い眼瞼下垂手術は適用されないことがあります。また、すべて自費診療なので、ある程度の費用が必要です。
「切る」手術における
リスクとは?
眼瞼下垂を治療するためには「切る手術」か「切らない手術」を受ける必要がありますが、それぞれにメリットやデメリットがあります。「切る」治療のデメリットは“ダウンタイムが長い”“切開したら元に戻すのは困難”という点が大きいものですが、やはり皮膚にメスを入れて切開する以上、リスクが気になる方は多いのではないでしょうか。
そこで、「切る」手術におけるダウンタイムやリスクについて紹介します。
「切る」手術のダウンタイムはどのくらい?
切る眼瞼下垂手術というと、挙筋前転法や挙筋短縮術などが挙げられます。眼瞼下垂の手術では皮膚の中でも薄いまぶたを切開するため、ダウンタイムも長くなりがちです。
■挙筋前転法
挙筋前転法では施術後10日間ほどは強めの腫れやむくみが生じることがあります。また、手術によって毛細血管を傷つけてしまった場合、1~2週間ほど内出血が起こることも。まぶたのメイクは抜糸がおこなわれる術後10~14日からさらに1週間ほど経ってからが良いとされていますので、術後2週間~最大3ヵ月ほどは腫れや赤みが残った状態を覚悟しておかなければなりません。
■挙筋短縮術
挙筋短縮術も挙筋前転法同様、術後10日間ほどは強い腫れや内出血がでることがあります。腫れが落ち着くまでには1ヵ月ほどかかります。また、結膜法では抜糸がないものの、経皮法では術後1~2週間後に抜糸をおこないます。
「切る」手術のリスクや副作用
■感染
手術によって傷口がウイルスや細菌に感染することがあります。もともとまぶたは血流が良いため感染症を起こしにくいとされていますが、不衛生な環境下での手術や傷口の消毒が完全でないと傷口が化膿してしまいます。
■むくみ・腫れ
切る手術では、術後のむくみや腫れのリスクは非常に高いでしょう。どの程度の腫れるかは使用する麻酔の量や出血量によって異なります。また、腫れやむくみがでる期間も人によって異なります。
■内出血
内出血も切る手術後のリスクとして挙げられます。内出血は表皮の下の部分で出血していますが、時間経過と主に自然と体内へ吸収されます。ただ、色味が強くでるため目立ちます。
■ドライアイ
眼瞼下垂手術によってまぶたが開くようになったことで、目が乾きやすい状態になることがあります。とくに眼瞼下垂は加齢によって起こることが多いものですが、加齢によって涙の分泌能力も低下しています。そのため、ドライアイになりやすいといえるでしょう。
■傷跡
皮膚を切開しているため多少の傷跡が残ります。肌質によって目立つ人もいれば、目立たない人もいます。傷跡が二重にうまく隠れるようであれば、目立ずにすむようです。
■左右差や術後形状の不満
手術の結果として左右のまぶたの開きに差がでたり、形状が希望通りでないことがあります。再手術が可能であれば対応してくれるかもしれませんが、再手術には更なるリスクが伴ううえ、皮膚切開後に完全に元通りにすることは困難です。
挙筋前転法
挙筋前転法とは、切る眼瞼下垂手術のひとつ。形成外科・美容外科などで広く採用されている術式で、後天性・先天性の眼瞼下垂はもちろん、軽症から重症まで幅広い症状に対応しています。まぶた表面の皮膚を切り、眼瞼挙筋と腱膜を再固定する手術で、皮膚のたるみや脂肪を一緒に取り除くことも可能。ミューラー筋などの組織を傷つけるリスクは低いですが、非常に難しい術式のため、満足度の高い仕上がりには高いスキルが必要となります。
挙筋短縮術
挙筋短縮法とは、ゆるんだ腱膜を瞼板に固定する手術法のこと。まぶたの表面を切る経皮法と、結膜側(まぶたの裏)を切る結膜法がありますが、ほとんどのクリニックでは経皮法が採用されています。この手術も、医師の高いスキルを必要とするもので、技術力が低いとミューラー筋を傷つけるなどの危険性が高くなります。安全・確実に手術を受けるためには、しっかりとした実績・技術を持った医師にかかることが重要です。
挙筋前転法
詳しい治療内容と適用条件について
挙筋前転法による治療では、局所麻酔をしてまぶたの切開を行った後、瞼板と腱膜を剥がし、ミュラー筋も腱膜から剥がします。そして、腱膜のみを瞼板に固定させることによって、眼瞼挙筋の機能が瞼板に伝わるように改善する治療法です[1][2]。剥がれてしまった腱膜を再度固定するという治療なので、非常に自然な形での改善が期待できるでしょう。
ただし、「眼瞼挙筋の機能を瞼板に伝える」ことが目的の治療法になるため、眼瞼挙筋の機能自体が弱くなっている場合には適用されません。そのため、かなり重度の眼瞼下垂や、先天性の眼瞼下垂には使うことができない可能性もあります。
術後の回復と通院について
挙筋前転法の手術時間は、約60~90分と短時間で終了するため、入院などの必要はありません。術後の通院は計4回程度必要で、抜糸をする1週間後と、2週間後、1ヵ月後、3ヵ月後の経過観察のために通院します[3]。手術による腫れや痛みは1~2週間程度で収まることがほとんどですが、2日間は目元のクーリングが必要です[2]。
挙筋短縮法
詳しい治療内容と適用条件について
挙筋短縮法では、局所麻酔を行った後にまぶたの切開をして、瞼板と腱膜を剥がすというところまでは挙筋前転法と同様です。ですが、挙筋短縮法では伸びた腱膜やミュラー筋を切除するという点と、腱膜とミュラー筋の両方を瞼板に固定するという点に違いがあります。
少しずつ腱膜を切除しながら目の開き具合がちょうど良くなるまで短縮し、適した長さまで切除が完了したら、腱膜とミュラー筋の両方を瞼板に固定して手術完了です[4]。
腱膜を切除するため、腱膜が伸びてしまった場合の眼瞼下垂にも対応できますが、その分体への負担が大きい術式だとされます。重度の眼瞼下垂によって、眼瞼挙筋の機能が衰えてしまっている症例でも適用できるという点が強みです[5]。
術後の回復と通院について
腱膜の切除が必要になる挙筋短縮法では、手術時間は約120分と挙筋前転法よりも少々かかる時間が長くなります。術後1時間は病院でのクーリングを行い、当日はガーゼによって固定が必要です。その後の通院は計4回で、翌日に傷の状態の確認、1週間後に抜糸、1ヵ月後に状態確認、3ヵ月後にデザインのチェックが行われます。2週間程度で痛みや腫れは引きますが、傷口が落ち着くのは約2ヵ月後、完全に傷が治るのは約6か月後です[4]。
挙筋前転法と挙筋短縮術のメリット・デメリットを比較
挙筋前転法 | 挙筋短縮術 | ||
---|---|---|---|
適応 | 軽度眼瞼下垂 | ○ | △ |
中度眼瞼下垂 | ○ | ○ | |
重度眼瞼下垂 | △ | ○ | |
重度先天性眼瞼下垂 | × | × | |
回復 | 抜糸 | 1週間後 | 1週間後 |
洗顔 | 翌日から | 翌日から | |
内容 | 手術時間 | 60~90分 | 120分 |
腱膜の切除 | なし | あり | |
体への負担 | 小さい | 大きい | |
手術の難易度 | 低い | 高い |
どちらの術式も一長一短
挙筋前転法は腱膜やミュラー筋を切除する必要がないので、体にかかる負担はかなり軽減されますが、眼瞼挙筋の機能が衰えている重度の眼瞼下垂には対応できません。
その点、挙筋短縮術なら、眼瞼挙筋の機能が弱くなっている重度の眼瞼下垂にも対応可能ですが、その分腱膜やミュラー筋を直接切除しなければならないため、手術時間は長くなり、体にかかる負担も大きくなります。そのため、軽度の眼瞼下垂であれば挙筋短縮術を選択するメリットは薄いと言えます。
術式は眼瞼下垂の重度によって決まる
挙筋前転法と挙筋短縮術を総合的に比較してみると、「中度までの眼瞼下垂なら挙筋前転法、重度の眼瞼下垂なら挙筋短縮術」という選択になることが分かります。ただし、両方の術式とも重度の先天性の眼瞼下垂に対応しないことからも分かるように、完全に眼瞼挙筋の機能が失われてしまっている場合は、どちらの術式も採用されません。
術後の生活に対する制限に大きな違いはないので、挙筋前転法で治療可能であれば挙筋前転法が選択され、挙筋前転法では改善が見込めないようであれば挙筋短縮法が選択されることになるでしょう。
眼瞼下垂の症状の重さとそれぞれの治療法について
眼瞼下垂は症状の重さによって、軽度、中等度、重度の3種類に分けられ、これらは後天的に発生する眼瞼下垂です。そして、生まれつきの眼瞼下垂として、「重度先天性眼瞼下垂」という眼瞼下垂も存在します。こちらでは、これらの眼瞼下垂の症状の違いについてご紹介しながら、見分けるための方法を探っていきましょう。
軽度眼瞼下垂
・症状と見分け方
瞳孔の中心から上まぶたの縁までの距離が、2mm以下になっている状態のことを指します。外見的には「眠たそうな目」に見える状態。ただし、まぶたが瞳孔にかかっているわけではないので、視界が狭い、見えにくいなどの症状はそれほどひどくありません。日常生活に困るような支障が起きることはなく、目がぱっちりとしないことが気になる程度です。
・治療法
軽度眼瞼下垂の場合は、健康面から考えれば治療の必要性はありませんが目力が弱くなるため治療を希望される方も多いようです。一重まぶたの軽度眼瞼下垂であれば、二重整形を受けることで解決することもあります。眼瞼下垂の手術で症状を解消する場合は、ほとんどの場合、挙筋前転法が用いられるようです。挙筋短縮術は交感神経などの機能を司っているミュラー筋を切除するため、眼瞼下垂の手術の中ではリスクが大きく、軽度眼瞼下垂で選択されることはほぼないでしょう。
中度眼瞼下垂
・症状と見分け方
中度眼瞼下垂は、真正面を向いている時に、上まぶたの縁が瞳孔部分にかかってしまっている状態です。目が開きにくいというはっきりとした自覚症状があり、力を入れて意識的にまぶたを開くようになるため、額に目立つシワが出来やすくなります。また、まぶたが上がらないため、二重のラインが薄くなる、ラインが無くなるなど、美容上の問題も発生してくるでしょう。
・治療法
挙筋前転法と挙筋短縮術のどちらを用いても治療ができますが、挙筋短縮術はミュラー筋への負担が大きいため、挙筋前転法が第一の選択肢です。眼瞼挙筋のゆるみではなく、まぶたの皮膚がたるんでいるせいで眼瞼下垂になっている場合は、目瞼切開法や眉毛下切開法など、皮膚を切り取る術式が選択されることもあります。
重度眼瞼下垂
・症状と見分け方
中度眼瞼下垂の状態から更にまぶたが下がり、上まぶたの縁が瞳孔の中央部分よりも下にある状態を指します。この状態では、力を入れて目を開けても、見える黒目の量は50%以下。黒目が50%以上見えるようであれば、中度眼瞼下垂と診断されるでしょう。重度眼瞼下垂になると、視界が狭くなって見えにくいため、仕事や家事などの作業効率が低下するだけでなく、目の痛みや肩こり、頭痛などが頻発するようになり、日常生活への支障が発生し始めます。
・治療法
重度眼瞼下垂では、挙筋前転法では改善できないことが多いため、挙筋短縮法による治療を行うことがほとんどです。挙筋短縮法では、皮膚の上からの切開以外に、結膜からの切開を行う場合もありますが、切る場所が異なるだけで手術法や効果に違いはありません。また、中度眼瞼下垂と同じく、皮膚のたるみが大きい場合は目瞼切開法、眉毛下切開法などによって、余った皮膚の切除が行われます。
重度先天性眼瞼下垂
・症状と見分け方
生まれつきの眼瞼下垂は、眼瞼挙筋の発達が未熟なために起こると言われていますが、重度先天性眼瞼下垂は、眼瞼挙筋がほとんど動かない状態のことです。そのため、上まぶたの力を使って目を開けることができず、アゴを上げて下まぶたを開くことで視界を確保します。瞳孔がまぶたで隠れてしまっている場合、弱視になる恐れもあるので、早めに診察を受けることが大切です。
・治療法
眼瞼挙筋の力がほとんど残っていない状態であれば、「筋膜移植法」という手術が適用されます。筋膜移植法とは、太腿の腱を切り取って、まぶたに移植する術式。太腿の大腿筋膜張筋腱という腱膜を採取して、瞼板と眉近くの筋肉の中間部分に移植することで、眉や額の力を使ってまぶたを開けられるようにする方法です。この術式では、長期的に眼瞼下垂を改善する効果があるとされていますが、反対に、まぶたが閉じにくくなってしまう、目を見開いた状態になってしまうなどの弊害が現れる可能性もあるとされます。