脳梗塞と眼瞼下垂
脳梗塞で眼瞼下垂の症状が現れることも
脳の血管が詰まり、その血管を通して栄養を受け取っている脳部位が深刻なダメージを受ける脳梗塞。脳梗塞によって眼瞼下垂の症状が現れている可能性があります。ここでは脳梗塞と眼瞼下垂の関係や特徴、脳梗塞によって起きている眼瞼下垂の治療法などを解説しています。
脳梗塞と眼瞼下垂の関係
脳梗塞は脳に栄養を与える脳血管が詰まり、脳に栄養が届かずに脳細胞がダメージをうける病気です。ダメージの箇所によってはまぶたを動かす動眼神経が麻痺し、眼瞼下垂の症状が現れます。
脳梗塞が眼瞼下垂を引き起こすメカニズム
脳梗塞が眼瞼下垂を引き起こす直接的な原因は、動眼神経の麻痺です。脳梗塞が起こると、中脳に栄養が運ばれずまぶたを開閉する「上眼瞼挙筋」を支配している動眼神経に異常(麻痺)が出ます。これが発端となって、上眼瞼挙筋の調節ができなくなり、まぶたが下がってくることで眼瞼下垂になります。
眼瞼下垂はもちろんですが、付随的なものとして、眼精疲労や頭痛、肩こりが起こる場合もあります。下がったまぶたを上げようとして、無意識におでこの筋肉である前頭筋を使うからです。それでも視野が狭いと正面を見る際にあごを上げるようになり、その状態が続くことで目が疲れやすくなったり、頭痛、肩こりの原因を作ってしまいます。
本来、まぶたを上げ下げさせるのは上眼瞼挙筋の役割であるにもかかわらず、眉やおでこを動かす役割の前頭筋に代替させようとして、余分な負荷をかけてしまっている状態です。
起こってから眼瞼下垂の症状が出るまでに、脳梗塞→動眼神経の異常→上眼瞼挙筋の調節異常→眼瞼下垂という経過をたどります。さらに副次的な症状として、前頭筋による無意識のまぶたの開閉、狭い視野を広げるために日常的にあごを上げるようになることで、眼精疲労・頭痛・肩こりの症状が現れやすくなります。
脳梗塞による眼瞼下垂の特徴
脳梗塞によって眼瞼下垂が起こっている場合、症状が急に現れるのが特徴です。左右どちらかの脳がダメージを受けた場合は、麻痺やしびれはダメージを受けた脳とは反対側に起こります。身体の片側だけに急速に症状が現れた場合は脳に何かが起こっている可能性があるため、すぐに医師に診てもらうことをおすすめします。
また目や身体の症状が現れてすぐに改善した場合、脳梗塞の前触れかもしれません。まだ血栓が小さい場合は、脳の血管が詰まってもすぐに血流によって流され、一度現れた症状がもとに戻ることも。この前兆症状が現れた段階で治療すれば、多くの場合重症にはなりません。症状がおさまったからと言って放置すると、前兆症状からしばらくしてさらに大きくなった血栓が脳血管に詰まり、意識障害や重大な後遺症、最悪の場合死に至ります。
以下に脳梗塞が原因で眼瞼下垂が起こっている場合の関連症状をまとめました。これらの症状が急激に現れた、症状が一度現れたけどすぐにおさまったという方はすぐに医師に相談しましょう。
脳梗塞で眼瞼下垂が起こっている場合の関連症状
症状 |
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・顔半分の運動が麻痺し、垂れ下がる(眼瞼下垂も含む) ・見え方がおかしい ・身体の片側が動かしにくい ・瞳孔の散大・縮小 ・瞳孔の大きさが左右で異なる ・身体が自然と左右どちらかの方向を向く ・片目の視力低下 ・物が二つに見える複視 ・視野の一部の欠損 |
脳腫瘍が原因となっている眼瞼下垂の治療法
脳梗塞で眼瞼下垂の症状が起きている場合は、脳梗塞の治療を優先します。脳梗塞の治療後、眼瞼下垂の症状が残っていても時間が経てば症状が緩和されるケースも。しばらく経過を観察し、改善が見られないようであればまぶたを引き上げる手術を行ないます。
脳梗塞の治療では症状が軽度のうちは、糖尿病や高血圧症など脳梗塞の原因となっている基礎疾患の治療を行ないます。意識障害が起きていたり急速に症状が進行したりする場合は、血栓を薬で溶かす血栓溶解療法や脳の腫れをおさえる脳浮腫療法がとられます。