3種類の眼瞼下垂について解説
眼瞼下垂は「先天性眼瞼下垂」と「後天性眼瞼下垂」の2種類。似たような症状を示すものとして「偽眼瞼下垂」まで含めると、同じまぶたが垂れ下がるという症状でも3つの可能性を考える必要があります。
先天性眼瞼下垂の子どもは、生まれつきまぶたの筋肉や神経の働きが弱く、重度の場合だとほとんどまぶたが開かない状態で出生するケースも。日を追うごとに少しずつまぶたを開けるようにはなりますが、やはり周りの子どもの目に留まってしまったり、視力の発達に悪影響を及ぼしたりする可能性があります。
後天性眼瞼下垂は、加齢や日々の習慣によりまぶたを引き上げる筋肉が伸びてしまうもの。まぶたのたるみと症状が似ている、あるいは同時に進行しているため見過ごされやすいのが特徴です。最近はスマホやPCの普及など目を酷使する機会が増え、先天的にまぶたに問題がなくても若いうちに眼瞼下垂になる人が増えているようです。
偽眼瞼下垂は、一見眼瞼下垂に似た症状を示すものの、まぶたを挙げる筋肉や神経に異常が見られないもの。ここでは、先天性眼瞼下垂や後天性眼瞼下垂、偽眼瞼下垂について詳しく紹介します。
先天性眼瞼下垂
先天性眼瞼下垂は生まれつきまぶたの筋肉や神経がうまく働かない状態です。まぶたを挙げる眼輪挙筋が生まれつき一部、またはすべて欠損しているケースが多いようです。
まぶたを挙げる眼輪挙筋が働かなくても、他の筋肉で補っており、見かけ上は問題ないケースも。片眼性と両眼性があり、片眼性の場合は他方のまぶたと比較できるため診断しやすいのですが、両眼性は診断が難しいと言われています。
視力の発達は生後1カ月ごろから3歳半ごろまで急速に進むと言われており、眼瞼下垂で視界がふさがれた状態のままでは視力の発達に影響がでることもあります。早期に発見し、適切な治療を受けることが大切です。
原因
- 眼瞼挙筋の発育が不十分,眼瞼挙筋の形成に問題,遺伝
- 見分け方:まぶたの開きが悪い,まぶたが下がりにくい,アゴを上げる、眉毛を上げるなどで視界を確保しようとする,目線のみで上を見た時に上まぶたに瞳孔が隠れる
- 主な発症年齢:出生直後から見られる
手術方法
- 挙筋前転法…眼瞼挙筋の機能が弱い場合
- 挙筋短縮術…挙筋前転法では改善が見込めないと判断された場合
- 筋膜移植法…眼瞼挙筋の機能がほとんどない場合
ダウンタイム
- 挙筋前転法…3日ほどは強い腫れやむくみがある,腫れは10日ほどで落ち着く,完成までは1~3ヵ月程度
- 挙筋短縮術…2~3日間強い腫れがある,腫れは1週間程度で落ち着く,洗顔は抜糸後から可能
- 筋膜移植法…1週間ほどは強い腫れがある,洗顔は翌日から可能,術後6週間後にまぶたが開くようになる,完全に腫れがひくまでは2~3ヵ月程度
術後管理
約1週間後に抜糸,約1ヵ月後に健診,運動・飲酒・長風呂などの血行を良くする行為は控える,術後1週間は目元のアイシングが効果的
後天性眼瞼下垂
後天性眼瞼下垂は、生まれつきまぶたの機能に問題がなかった人のまぶたが、加齢によって垂れ下がり、生活に支障を及ぼしている状態を指します。まぶたの筋肉が伸びてしまったり、筋肉を支える組織と筋肉のつなぎ目が切れてしまったりするのが原因です。いずれにしても、まぶたを引き上げる筋肉がうまく機能せず、まぶたを挙げづらくなります。
まぶたの構造や筋肉・神経の状態によって進行速度は異なるものの、放置すると年を取るほど筋肉や支持組織が衰えて重症化していくケースが少なくありません。先天性眼瞼下垂で見過ごされていたケースでは、幼い時に眼瞼下垂の症状が現れることも。PC・スマホの長時間利用や濃いアイメイクなどまぶたに負担をかける習慣があると、若い人でも後天性眼瞼下垂になりやすくなります。
原因
- 加齢による眼瞼挙筋や瞼板の結合部分の緩み,動眼神経麻痺,重症筋無力症,目の周りの外傷,ハードコンタクトレンズの長期使用,目をこする癖,目の周囲の筋肉の異常
- 見分け方:正面を向いた時に上まぶたの縁が瞳孔にかぶさる,まぶたを開きにくい,眉や額に力を入れなければ目を開けない,目の奥に痛みがある,歯や咀嚼筋に疲れを感じる(目を開く際に歯を食いしばるため),肩こりや頭痛がある
- 主な発症年齢:皮膚のたるみや眼瞼挙筋の結合部分たるみの場合は50代~,目をこする癖がある場合は若年でも発症,外傷性の場合は年齢を問わない
手術方法
- 挙筋前転法…上まぶたの縁が瞳孔の中央よりも上にあり、皮膚のたるみが少ない場合
- 挙筋短縮術…上まぶたの縁が瞳孔の中央よりも下にあり、皮膚のたるみが少ない場合
- 余剰組織切除術…まぶたのたるみが大きく、皮膚が多く余っている場合
ダウンタイム
- 挙筋前転法…3日ほど強い腫れやむくみが継続,軽い腫れが10日ほど継続,1~3ヵ月後に完成
- 挙筋短縮術…2~3日間強い腫れが継続,軽い腫れが1週間程度継続,洗顔は抜糸後から可能
- 余剰組織切除術…強い腫れは10~14日間,軽い腫れが1ヵ月程度継続,3~6ヵ月後に完成,傷が目立たなくなるまで1~2年程度
術後管理
いずれの術式も約1週間後に抜糸,約1ヵ月後に健診,腫れを抑えるため血行を良くする行為は控える,1週間はタオルに包んだ氷などでアイシングをする
参考:日本眼科学会『眼瞼下垂』
偽眼瞼下垂
偽眼瞼下垂は、外見上眼瞼下垂と似たような症状を示すものの、まぶたを挙げる筋肉や神経、そしてまぶたと筋肉をつなぐ腱異常が見られない状態です。皮のたるみ、おでこの筋肉の異常による眉の下垂や目の周りの骨折、場合によっては大きな疾患が隠れていることもあります。治療法は定まっておらず、原因を特定後、それに合わせたアプローチが採られます。
原因
- 額の皮膚や筋肉がたるんでまぶたを押し下げている(眉毛下垂),まぶたの皮膚のたるみ(眼瞼皮膚弛緩症),先天的に眼球が小さい(小眼球症),まぶたの機能異常(眼瞼痙攣),眼球の陥没(眼球陥凹)
- 見分け方:皮膚のたるみの場合…上まぶたをつまみ上げると目は正常に開いている
- 小眼球症…先天的に眼球全体が小さい
- 眼瞼痙攣…瞬きがしにくい,目の開け閉めがしにくい,ドライアイ
- 眼球陥凹…瞳孔の縮小や発汗低下、顔の紅潮などが併発(ホルネル症候群)
- 主な発症年齢:疾患が原因の場合年齢を問わない,小眼球症は出生直後,皮膚のたるみの場合は50代~
手術方法
- 埋没法…まぶたのたるみが少ない場合
- 切開重瞼…眼瞼挙筋の動きが正常でまぶたのたるみが多い場合
- 眉毛下切開…まぶたのたるみが多く目元の印象を残したい場合
- 眉毛挙上術…まぶたよりも額部分の皮膚のたるみが強い場合
- その他の疾患が原因の場合は該当疾患の治療法に準ずる
ダウンタイム
- 埋没法…小さな腫れが2~3日継続,1~2週間内出血がある可能性がある
- その他の術式…腫れが1~2週間継続,内出血が起きた場合2~3週間継続
術後管理
- 埋没法…1週間後に健診のために通院,抜糸はなし
- その他の術式…1週間後に抜糸,1ヵ月後・3ヵ月後・6ヵ月後に健診のための通院
- 全ての術式で洗顔やメイク、短時間の入浴は当日から可能
先天性眼瞼下垂の多くは、乳児のうちに手術が行われます。軽度であれば子供の成長によって経過観察となり、3歳から本格的な治療に入るでしょう。
問題視されるのは後天性眼瞼下垂・偽眼瞼下垂で、生活習慣との関係も否定できません。では、この2つの症状は、何に注意しておくべきか説明します。
外傷や目の過度な負担により神経や組織が傷ついた「後天性眼瞼下垂」
白内障や緑内障の手術を受けた後、後天性眼瞼下垂を発症することがあります。
眼科手術の際に拳筋腱膜やミュラー筋(上眼瞼腱膜筋の下にある筋)に刺激が与えられたことで発症したものと分析されています。眼科手術による合併症として認められるため、視野障害などがある場合に疑う必要があります。
(参考URL:眼科手術後に生じた後天性眼瞼下垂症についての分析)
また、以下のような原因によって神経が傷つけられることでも、後天性眼瞼下垂になりやすいでしょう。
- ・ハードコンタクトレンズの長期使用
- ・パソコン・スマホ・タブレットの使いすぎ
- ・過度な二重まぶたのアイメイク
これらの日常的な動作が積もり積もって、後天性眼瞼下垂を引き起こしているのです。良くないと思いつつもスマホの画面に見入る。アイメイクを落としきれていない。どれも心当たりのある人がいるかもしれません。
このような原因で後天性眼瞼下垂となる場合は、両方の目で発症しやすく、不眠なども併発する可能性があることが特徴的です。
後天性眼瞼下垂と診断されたとしても手術を受ければ問題ありません。どの手術方法が選ばれたとしても、ほとんどが日帰りで対応可能。いつの間にかまぶたがたるんでいた。日常生活に気分が優れない。そんな場合も、切開手術を受けることで改善するでしょう。
筋肉や周辺組織には異常がない「偽眼瞼下垂」
偽眼瞼下垂はさまざまな原因によって眼瞼下垂に見えてしまうだけで、筋肉や周辺組織などに異常はなく、まぶたの奥で目はしっかりと開いていることが特徴です。
病気ではなく多くは加齢や体質的な部分になるため、手術となれば美容目的となる可能性が高いでしょう。
上眼瞼挙筋機能が残っている場合は、切開重瞼・眉毛下切開などの術式になり、機能があまり残っていないなら眉毛挙上術で吊り上げる方法が選ばれたりします。
生活習慣による後天性眼瞼下垂と偽眼瞼下垂は似ている部分もありますが、決定的な違いは保険が適用されるか否かです。
加齢とともに誰にでも偽眼瞼下垂になる可能性はあり、それを引き金として頭痛・肩凝り・首凝りなどが誘発されたりもします。
眠そうに見られる。年齢よりも老けて見られる。人によっていろいろ悩むポイントは違いますが、筋力や腱膜に問題がなければ切開のみなので、想像しているよりは難易度も高くありません。
眼瞼下垂の治し方
眼瞼下垂は軽度であれば、まぶたに貼るテープや接着剤を使う方法が提唱されたりしています。ドラッグストアで手に入るため、自分で対応できる対処法として紹介されていますが、簡単に自己判断で使用するのはおススメできません。
どの程度の眼瞼下垂なのか。様子を見ていても大丈夫なのかどうか。潜在的な病気が隠されている可能性もあるので、素人判断で決めてしまうのではなく、医師の診察を受けてから手術が必要か否かを診断してもらうと良いでしょう。
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SYMPTOM 01
眼瞼下垂手術は保険を
受けられる眼瞼下垂の手術は、厚生労働省によって認められた保険適用の手術。適用されれば、3割負担で5~6万円ほどの費用で手術を受けることができます。ただし、医師に眼瞼下垂であると認められなければ保険適用とはなりません。診断方法も医師によって異なるため、どのような検査を行うのか、あらかじめ確認しておいた方が良いでしょう。また、保険の手術は機能回復を前提としたものなので、見た目に関する希望を叶えることはできません。
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SYMPTOM 02
カウンセリングで
聞いた方が良いことリスト眼瞼下垂の治療を希望する際、まず最初に受けるのがカウンセリングです。直接ドクターと話すことができる大切な場なので、聞きたいことや不安があるなら、遠慮せずに話してみることが重要です。どんな治療法が適用されるのか・担当する医師の実績は十分か・施術はどのように進むのか・術後のフォローはあるのか・費用はいくらかなど、カウンセリングのときに聞いておきたいことをリストアップしていますので、ぜひ参考にしてください。
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SYMPTOM 03
先天性眼瞼下垂
生まれてすぐにまぶたの異常が見られる、先天性眼瞼下垂。まぶたを上げる眼瞼挙筋の機能が十分に働いていないことが原因で、ほかの機能(眼球を動かすなど)には問題が見られないのが特徴です。目がまったく開かないという場合は、乳幼児であっても手術を行いますが、目が少しでも開くのであれば、急いで治療をする必要はありません。発達のことも考慮し、基本的には3歳以上になってからの手術が推奨されています。
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SYMPTOM 04
後天性眼瞼下垂
後天性眼瞼下垂とは、加齢・ハードコンタクトの使用・目の酷使などによって、少しずつまぶたが下がってくる症状。まぶたが目に覆いかぶさることによって視界が悪くなり、見た目も気怠そうな感じになります。後天性眼瞼下垂は、大きく分けて老人性・腱膜性・外傷性があり、それぞれ原因・治療法が異なるのが特徴。治療はすべて手術となりますが、皮膚を切開する方法と、糸を使った切らない眼瞼下垂手術があります。
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SYMPTOM 05
偽眼瞼下垂
まぶたのたるみ・目を開けにくいといった、眼瞼下垂に酷似した症状を持つ「偽眼瞼下垂」。眼瞼下垂との大きな違いは、筋肉などの組織に異常が見られないことです。しかし、見た目的には眼瞼下垂と非常に似ているため、勘違いをしてしまう人も少なくありません。原因には、眉毛下垂・眼瞼けいれんなどがありますが、治療は眼瞼下垂とほとんど同じ。ただし、多くのケースで保険適用が認められていないため、自費診療となります。
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SYMPTOM 06
眼瞼下垂の術後経過
眼瞼下垂の手術では、多くのケースでまぶたの腫れや内出血が見られます。その症状が引くまでの期間をダウンタイムと呼び、一般的には切開法の方が期間は長くなります。ここでは、術後どんなふうに傷が回復していくのか、その間に注意すべきことには何があるのかなどを、詳しく解説しています。
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SYMPTOM 07
眼瞼下垂の後遺症
リスクのない医療行為はないため、もちろん眼瞼下垂の手術にもリスクは伴います。ここでは、「目が大きく開きすぎる」「二重まぶたがアンバランスになる」「まぶたを完全に閉じられなくなる」など、眼瞼下垂の手術に見られるトラブル・後遺症についてまとめています。万が一問題が起きた際の対処の仕方や、リスクを回避するための医師選びなども紹介していますので、ぜひ確認してください。
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SYMPTOM 08
片目だけの眼瞼下垂
先天性眼瞼下垂のおよそ8割は片目だけに症状が現れるといわれています。片目だけの眼瞼下垂は左右差が激しいため、目立ちやすいもの。また、片目の眼瞼下垂の症状が重度の場合は脳梗塞や糖尿病を疑うこともあります。左右差のある眼瞼下垂症は治療可能ですが、術後の自然な仕上がりには医師の技術力と豊富な経験が必要。医師選びは慎重に行いましょう。






