重症筋無力症
重症筋無力症とは脳からの指令を伝える神経と筋肉の間に伝達障害が起こる疾患で、厚生労働省によって特定疾患に指定されています。脳からの情報がうまく伝わらないため、筋力が低下。目の周辺筋肉の働きも低下し眼瞼下垂の症状が現れたり、眼球の運動低下によってものが二重に見えたりします。
重症筋無力症は早期に治療を受けることで、症状を抑えることが可能です。治療の開始が遅くなるほど重症化する可能性が高まるため、眼瞼下垂以外にも手に力が入りづらい、ものが二重に見えるなど気になる症状がある場合、すぐに専門医に診てもらいましょう。
動眼神経麻痺
動眼神経とは脳から出ている神経の一つで、目の周りの筋肉を支配しています。動眼神経が麻痺すると目の周りの筋肉がうまく働かなくなり、眼瞼下垂の症状が現れることも。動眼神経麻痺は大きく、外傷によるものと疾患が原因となっているものに分けられます。
外傷による動眼神経麻痺
動眼神経麻痺のうち、最も多いのは外傷によるものです。頭部や顔面を打撲して神経が傷つくと、すぐに眼瞼下垂や眼球運動障害といった症状が現れます。神経の機能が比較的保たれている場合、内服で神経を保護しながら機能の回復を待ちます。神経の損傷が激しい場合は、手術で目の位置を調整するなどの措置が必要です。
関連疾患による動眼神経麻痺
動眼神経麻痺は関連疾患によって起こっている可能性があります。疾患により症状は異なりますが、脳の一部分や神経の働きが妨げられることにより症状が現れます。動脈瘤や脳梗塞など、早急に対応しなければ命に関わる疾患が隠れていることもあるため、放置せずに医師に相談しましょう。
白内障
白内障とは一般的に、加齢に伴い目の中にある水晶体が白く濁ってしまう病気のことです。水晶体は、カメラに例えるとちょうどレンズにあたる部分。この水晶体が濁ることで、かすみや視力低下などの症状を引き起こします。白内障の発症率は、60代の人で6割以上、70代で約8割。比較的、年齢を重ねるごとにかかりやすくなる病気といえます。
白内障治療では、濁っている水晶体の代わりに人工の眼内レンズを入れる手術をします。この手術を受けた後、眼瞼下垂の症状が高い割合で起こっているとのこと。なぜ起こるのかは明確に判明していませんが、手術のときに使用する開眼器でまぶたが強く引っ張られることが原因ではないかと考えられています。
ホルネル症候群
ホルネル症候群とは眼と脳をつなぐ交感神経に障害が生じることで起こる病気です。眼と脳をつなぐ交感神経には3つの神経細胞がありますが、どの神経細胞が傷ついてもホルネル症候群を発症します。
ホルネル症候群は片側の顔面に発症します。症状としては軽度の眼瞼下垂、瞳孔の縮小や眼球の後退などが挙げられます。とくに瞳孔の縮小では瞳孔が開きにくくなり、暗所にいっても瞳孔が開かないという症状がみられます。また症状のある片側の顔面だけ汗をかきづらくなる発汗低下も起こることがあります。
ホルネル症候群は腫瘍や外傷などのほかに肺がんや首のリンパの腫れ、大動脈解離または頸動脈の解離、胸部大動脈瘤などの病気が原因となっていることがあります。そのため、ホルネル症候群の原因を改善しない限り、症状は良くなりません。「なぜ起こったのか」を追求し、ホルネル症候群になった原因疾患を治療することが大切です。
眼筋麻痺
眼筋麻痺とは何らかの障害によって眼の筋肉が動きづらくなる症状です。おもに外眼筋とよばれる筋肉が原因となることが多く、加えて動眼神経に障害が生じたときに眼瞼下垂を引き起こします。
眼筋麻痺ではまず「複視」とよばれる「モノが2つに重なって見える症状」が自覚症状として現れ、重症化すると正面を向いていてもモノが2重に見えます。眼瞼下垂だけでなく複視の症状が現れている場合は眼筋麻痺の可能性が高いため、速やかに医療機関を受診しましょう。
なお、眼筋麻痺になる理由はさまざまであり、腫瘍や外傷、重症筋無力症などのほか、糖尿病や高血圧が原因で起こることが多いようです。
緑内障による点眼薬の使用
緑内障とは視神経に障害が起こることで視界が狭くなる病気です。視野狭窄(しやきょうさく)の症状は初期・中期・末期と段階を経て視界が狭まり、最終段階では失明する恐れもあります。視神経の障害は眼圧の上昇によって起こり、治療では眼圧を下げることを目的に点眼薬の投与や外科的治療を行います。
しかしこの緑内障点眼薬は副作用として眼瞼下垂を引き起こす恐れがあります。おもにプロスタグランジン系の成分が原因ですが、緑内障治療において点眼薬投与は重要であり、治療の経過とともに効果や副作用の程度を医師に診てもらうことが大切です。