眼瞼下垂の原因となる脳腫瘍
脳腫瘍では眼瞼下垂以外の症状も現れます
眼瞼下垂は脳腫瘍によって引き起こされている可能性があります。ここでは脳腫瘍と眼瞼下垂の関係や脳腫瘍による眼瞼下垂の特徴、その治療法などを解説しています。
脳腫瘍と眼瞼下垂の関係
脳腫瘍とは頭蓋骨(ずがいこつ)の中にできる腫瘍のことです。腫瘍が頭蓋骨と脳の間で大きくなると脳が圧迫され、その位置によって現れる症状はさまざま。眼球の後ろ側に位置する海綿静脈洞(かいめんじょうみゃくどう)内にできると、目の周りの筋肉をつかさどる神経を圧迫し、眼瞼下垂の症状が現れます。
脳腫瘍が眼瞼下垂を引き起こすメカニズム
脳の海綿静脈洞部には目や顔面の筋肉を支配している神経が集まっています。この部分に腫瘍ができ神経が圧迫されまぶたの動きを支配している動眼神経に麻痺が生じると、まぶたをうまく引き上げることができず眼瞼下垂の症状が現れます。
脳腫瘍による眼瞼下垂の特徴
脳腫瘍が海綿静脈洞部にできると、眼瞼下垂だけでなく物が二重に見える「複視」や「顔面痛」といった症状が同時に起こる可能性があります。また腫瘍が大きくなると、ホルモン分泌をつかさどっている下垂体が圧迫され、甲状腺機能や副腎皮質ホルモン(ステロイド)の分泌機能が低下することも。それにより性機能が低下したり肥満になったりといった症状が現れます。
以下に海綿状動脈部・下垂体が腫瘍によって圧迫された時に現れる症状をまとめました。
海綿状動脈部の神経が圧迫された時の症状
働き | 症状 | |
---|---|---|
外転神経 | 眼球の外側の動きをつかさどる | ・眼球の外側への運動ができなくなり、正常よりも内側を向いている状態になる ・ものに焦点を合わせることが難しくなり、二重に見える |
動眼神経 | まぶたの運動や眼球運動をつかさどる | ・眼瞼下垂の症状が現れる ・瞳孔が散大 ・眼球運動の障害 ・(動脈瘤が原因の場合)症状が身体の片側に現れ、頭痛を伴いながら急速に進行 |
滑車神経 | 目の外側や下向きの運動をつかさどる | ・物が二重に見える(特に下方向) |
眼神経 | 眼窩内や前頭部、鼻腔の近くをつかさどる | ・顔面のけいれん、痛み |
上顎神経 | 上顎や上顎の歯、上唇などの感覚をつかさどる | ・顔面のけいれん、痛み |
下垂体が圧迫された時の症状
働き | 症状 | |
---|---|---|
下垂体 | ホルモン分泌やホルモンの働きをコントロールしている | ・成長ホルモンの異常による巨人症(子どもの場合)や先端肥大症(大人の場合)を発症。それに伴って高血圧や糖尿病の症状が現れる ・甲状腺ホルモンの異常による動悸・体重減少など ・副腎皮質ホルモンの異常による肥満や高血圧、多毛、色素沈着など ・無月経や乳汁の分泌(女性の場合) ・性機能の低下 |
脳腫瘍が原因となっている眼瞼下垂の治療法
海綿静脈洞部にできた脳腫瘍を手術で取り除く場合、手術中の出血が多いと術後に視力・視野障害が悪化する可能性があります。手術によって後遺症が残らないように取り除くのは難しいため放射線治療によって腫瘍を取り除きます。
脳腫瘍によって長期間圧迫され続けた神経は、腫瘍の摘出手術を行っても回復しないことがあります。神経の損傷が軽度のうちに治療を行なうことが大切です。