タッキング法
SURGERYタッキング法なら、切開なしに眼瞼下垂を改善することが可能
眼瞼下垂の治療では、皮膚を切開して症状を改善する方法が一般的でした。しかし、糸を用いるタッキング法なら、まぶたに傷を残さずに症状を改善することが可能。「顔にできるだけメスを入れたくない」と考えている方にも、おすすめの治療法となっています。
ここでは、そんなタッキング法の施術内容・効果・メリットとデメリット・ダウンタイムといった情報をまとめてご紹介しています。
挙筋腱膜タッキングの施術方法
挙筋腱膜タッキングとは、軽度~中等度の眼瞼下垂や腱膜性の眼瞼下垂に対して行われる手術法で、ナイロンなどの糸で瞼板に張り付いている腱膜を手繰り寄せて短くし、目の開きを改善します[1]。
眼瞼下垂の症状が軽度の場合には、まぶたの裏側にある結膜部分から糸を使って手繰り寄せることができるため、切開が必要ありません。多少症状が強い場合には、二重のラインに沿って12mmほどの切開を行って腱膜を手繰り寄せます[2]。
どちらにしても、挙筋腱膜を切らずに糸でまとめる方法なので、筋肉を切除する必要がなく、出血や術後の腫れがほとんどないと言われています[2]。
挙筋腱膜タッキング術が向いている人
挙筋腱膜タッキング術の適応が向いている方の特徴は、まぶたの皮膚にたるみのない方です。そのため、ハードコンタクトを長期的に使用していることによる眼瞼下垂などに適応されることが多いでしょう[3]。反対に、皮膚のたるみによって目の開きが悪くなっている方であれば、挙筋腱膜タッキング術では希望した効果が得られない可能性もあります。
また、中等度以上の症状を持っている方であれば、挙筋腱膜タッキング術では軽度の眼瞼下垂が残ってしまいます。この術式はあくまでも軽度~中等度の眼瞼下垂の方に適しているものなので、眼瞼下垂の症状が強い方は他の術式が適応されるでしょう[4]。
挙筋腱膜タッキング法の手術について
挙筋腱膜タッキング法の手術は局所麻酔によって行われ、施術時間はおよそ30分程度です。緩んでしまった眼瞼挙筋を折りたたむように短くして糸で留めます。糸を留めるのはまぶたの裏側。固定箇所は1~3点がありますが、それぞれ一長一短で、1点留めでは固定力に乏しく、3点留めでは固定力は十分ですが、ダウンタイムが長くなります。そのため、2点留めを採用しているクリニックが多いようです。
糸で挙筋腱膜を留めるだけの施術法なので、二重整形の埋没法と同じように、糸を外せば元通りの目に戻れるという点が特徴です。そのため、万が一自分の思ったような目元にならなくても、やり直すことが出来る点は大きなメリットでしょう[5]。
ミュラー筋タッキング(ミュラータック法)の施術方法
ミュラー筋タッキング法は、日本の眼瞼下垂治療で最もよく行われている治療法です。適応は軽度から中等度までの眼瞼下垂で、かなり重度の例では効果が発揮されないことも考えられます。
挙筋腱膜タッキング法との違いは、ミュラー筋タッキングでは挙筋腱膜とミュラー筋を剥離するという点と、挙筋腱膜ではなくミュラー筋をタッキングするという点です。ミュラー筋は挙筋腱膜よりも柔らかいので、挙筋腱膜タッキング法よりも自然な仕上がりを期待できるでしょう[1]。
また、切開はおよそ12mmと範囲が小さいため、術後の腫れなどは比較的少ないと言われています[3][6]。
ミュラー筋タッキング法が向いている人
ミュラー筋タッキング法も重度の眼瞼下垂には対応できないことがあるので、軽度~中等度の症状の方に向いています。また、挙筋腱膜タッキング法と同様に、皮膚を切り取らない術式なので、皮膚のたるみが少なく、目の筋肉のみがゆるんでしまっている例に適した術式です[7]。そのため、年齢を重ねて皮膚が多く余ってしまっている方であれば、他の方法が適用されるでしょう。
ミュラー筋タッキング法の手術について
ミュラー筋タッキング法も局所麻酔によって行われる手術で、施術時間は両目で30分程度です[3]。まぶたの縁から5~7mmほどの幅を開けたところを12mmほど切開し、挙筋腱膜とミュラー筋を剥離。その後、ミュラー筋のみを折りたたむように短くして糸で留めます[5]。その他の特徴は挙筋腱膜タッキング法と同様で、こちらの方法でも糸を取り外すことによるやり直しは容易です。
施術の効果
手術を受けてすぐに目が大きくなり、目力がアップするのが特徴。まぶたを開けるのに力を入れなくて済むようになるため、額のシワが少なくなったり、頭痛・肩こり・眼精疲労といった悩みが解消されることもあります。
ただし、タッキング法で効果が見られるのは、比較的軽度の眼瞼下垂のみ。まぶたのたるみや、筋力の低下が病的と診断される中等度~重度の眼瞼下垂に対しては、効果がほとんど見られないことがあります。
手術前の注意事項
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- 失敗する確率が高い?
- 実績に乏しい医師が施術を行った場合、短期間で元に戻ってしまうなどのトラブルが起こることもあります。まぶたのどの部分に糸を通すかで、仕上がりが左右される手術のため、医師の技術力・デザイン力はとても重要です。
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- かならず二重になる?
- 切開法による眼瞼下垂手術だと、術後は二重まぶたになりますが、皮膚を切らないタッキング法なら一重まぶたの方が二重になることはありません。元々のイメージを大きく損なうことなく、機能を回復することができます。
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- 1回の施術で終わる?
- 施術は基本的に1回でOK。術後に抜糸をする必要もないため、これといったトラブルがなければ、手術当日の1回のみの来院で済みます。
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- 保険適用は可能?
- タッキング法による眼瞼下垂治療は、保険適用とはなりません。自費診療となります。
メリット・デメリット
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メリット
- 皮膚に傷あとがつかない
- まぶたの表面を切らずに手術を行えるため、外見上目立つ傷が残りません。
- 腫れが最小限
- まぶたの裏から施術を行い、切開をすることもないため、術後の腫れを最小限に抑えられます。
- 術中の開き具合の調整が可能
- 手術の途中で、目の開き具合や二重のラインを確認・調整することが可能です。
- 臨床結果が十分
- 10年以上にわたって行われている術式のため、臨床結果が十分にあり、安全性◎。
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デメリット
- 高度な技術、経験が必要
- まぶたの裏側から施術を行うため、医師の確かな経験と技術力が必須となります。
- 十分に効果が見られないことがある
- まぶたのたるみが重い場合、手術を受けても思ったような効果が得られないことがあります。
- 元に戻ってしまうことがある
- 糸で結んでいるだけなので、次第にゆるんで元の状態に戻ってしまうことがあります。
おおよその手術費用
タッキング法の費用は、両目で20万円前後が目安。施術費用のほかに、麻酔の費用がプラスされることもあります。なかには10万円台や40万円台のクリニックもありますが、異常に安い・高いと感じる場合は、その理由をしっかりと確認しておきましょう。
ダウンタイムについて
ダウンタイムがほとんど見られないのが、タッキング法の大きなメリット。腫れが見られることはほとんどなく、もし見られたとしてもごく軽度のもので、2~3日で消失します。手術部位はできるだけ触らないようにし、こまめにアイシング(冷却)をすると引きが早くなります。
メイクは翌日からOK、仕事や学校へ行くのも問題はありません。コンタクトレンズは当日から着用できますが、負担を軽くするためにも、できれば翌日からの方が良いでしょう。
施術後のスケジュール
縫合・抜糸の必要がないため、基本的に来院は施術当日のみとなります。クリニックによっては、1週間後に経過観察、さらに1ヶ月後くらいに糸の状態・炎症などをチェックすることもあるようです。ただし、その間に気になることがあれば、遠慮せずに相談するようにしましょう。
[1]参考:横浜桜木町眼科『眼瞼下垂の術式と手術例』
[2]参考:大澤眼科・内科『挙筋タッキング法』
[3]参考:サトウ眼科『日帰り眼瞼下垂手術』
[4]参考:東京医科歯科大学 眼科『眼形成疾患』
[5]参考:新垣形成外科『埋没挙上術』
[7]参考:日本医事新報社『整容面を考慮した眼瞼下垂手術 【開瞼量・重瞼線の左右差,睫毛の内・外反,厚ぼったい瞼などの注意点を念頭に調整】』